結核症の解説

結核症の解説

 結核症は抗酸菌であるマイコバクテリウム属の結核菌の感染症です。

 2008年のWHOの報告では全世界で920万人が新規感染発症し、170万人が結核症で死亡しているそうです。日本においては2007年の新規結核症発生数は約25000人でした。山梨県では2010年の1年間で約70人の入院が必要な結核症患者が発生しています(山梨県立中央病院ホームページより)。つまり結核症はまだ忘れ去るには危険すぎる感染症といえます。高齢者での発病が全体の半分を占めていますが、特に活動性の高い若年者での発病、集団発生も注目されています。

 結核菌は3μmほどの大きさの菌で自然界では人の体内でのみ増殖できます。感染経路は空気感染です。発病している患者の体内から咳などで排出され、約5μmほどの大きさの飛沫核となって空気中をただよい、それを吸入することによって感染します。結核菌は感染が成立してもすべて発病するわけではなく約20%の患者のみが発病して症状が出現します。それ以外は体の免疫反応により閉じ込められて潜在性感染状態で生涯発病せずに終わります。

どこに病巣を作るのか

 吸入された菌はやはり肺に多く病巣を形成しますが、肺以外にも脳神経(髄膜炎)、リンパ節、皮膚、骨、腸、肝臓、腎臓、全身播種(粟粒結核)など様々な臓器に病巣を形成します。病巣の特徴としては結核菌を免疫細胞が取り囲み壊死を伴うかさぶたのような組織(乾酪肉芽腫)を形成します。この組織はもろく、大量の結核菌を含んでおり、これが気管支など体外にこぼれでることによって菌が排出されていきます。

発症のパターン

 結核症の発症には2つのパターンがあり、感染からすぐに発病する1次結核と、長い場合は数十年後に患者の抵抗力の低下を見計らって発病する2次結核があります。近年増加化傾向の高齢者における結核はほとんどが2次結核です。 

ハイリスクグループとは

 発症しやすいグループは高齢者、糖尿病、HIV感染者、免疫抑制剤使用者、癌患者、慢性腎不全患者、アルコール依存症患者、胃切除後の患者がハイリスクグループといわれています。

結核発症の症状と検査・診断

 結核が発病したときの症状は2週間以上長引く咳、喀痰、血痰、発熱、全身倦怠感、体重減少、呼吸困難などで、結核に特徴的な症状はありません。治りにくい症状があった場合は早めに医療機関を受診することが重要です。肺結核症の診断は症状から結核を疑い、胸部レントゲン検査で肺の病変を調べます。喀痰検査で結核菌を顕微鏡で探したり、結核菌遺伝子を検出すると確定診断となります。菌の広がった部位での症状が出現してきますが、最も多い肺結核では肺に空洞を形成したり、肺炎になることで呼吸困難や出血して喀血することがあります。進行すれば呼吸不全から死に至ります。

結核の治療

 結核症の治療は抗結核薬の多剤併用療法が標準的に行われています。中心となる薬剤はイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドで、さらにエタンブトールまたはストレプトマイシンを加えた4剤治療の6ヶ月間が標準治療になります。これらの治療でほぼ9割方治療は成功します。何らかの理由で治療が不十分になったりすると結核菌に耐性化する隙を与えてしまうので完全に治療をやりきることがきわめて重要であります。

感染症法・公費負担

 2007年から結核対策は感染症法に基づいて実施されています。排菌のある開放性結核患者は専門病棟での隔離対象となります。入院費、薬剤費は公費負担となります。排菌のない患者は全身状態に問題がなければ外来での通院治療が可能です。その際にも薬剤費は一部公費負担となります。

参考文献
結核Up to Date 改訂第3版 四元秀毅 倉島篤行 南江堂